映画版『グスコーブドリの伝記』感想
Twitterからの転載になりますが、『グスコーブドリの伝記』感想です。
映画版「グスコーブドリの伝記」を見る。ますむら・ひろしキャラ原案とのことで、しかし氏の「宮沢賢治選集1」所収の(キャラこそ猫だが話は原作に忠実な)漫画版を思い浮かべると、この映画版に驚くことになる。例えば、謎のファンタジー空間、レトロフューチャー? な世界観、話の展開の改変など→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
まず、妹ネリを攫っていった謎の猫、異形の存在達、そしてこれらの属している「あちら側の世界」。時折ブドリも垣間見ている世界で、ネリの誘拐=死といった感じに改変しているのかと思ったら、最後、そのネリを誘拐してった猫がブドリをカルボナード火山へと連れてったりもしてるようで→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
それは、ブドリなりに生じた出来事への納得を図ろうとしての幻想である、或いは、彼がもとより死に近い心性をしていた、など、いろんな解釈ができそうな気はする、が、てぐす工場のくだりや、最後の火山に行く場面など、現実と幻想とを混淆させなくてもいいのでは、と思う場面もある。それゆえか→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
ブドリという青年の一代記、その淡々とした筆致にどこかリアルさを感じさせる原作及び漫画版に対して、映画はファンタジー感が非常に強まっている。「歴史の歴史」とか、原作とてもとよりファンタジーな要素を有しているとは言えようが、精神世界とか超越的な世界を登場させているわけではない。→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
原作及び漫画は、あくまでブドリという人物と及びその関わってきた人々の生き様を直接にえがいているという意味で、童話ではあれ、現実をえがいた話になっていたように思う。そしてまた、ファンタジーという意味では、そのレトロフューチャー的な? 世界観も、映画版独特の雰囲気を作り出していた→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
人力の耕作機の走る牧歌的なオリザの沼ばたけ、ブドリ達の住んでいた山間の田舎、しかしそれらに対してある、空を舞う大小様々の飛行船、モノレール様の飛行船、石造りの西洋建築立ち並ぶイーハトーヴ、火山局にあるコンピュータの現代的なインタフェースなど、ここにも田舎っぽさ、或いは古くささと→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
未来的な要素との「奇妙な混淆」が見られる。子供の足+汽車で行ける距離で、こうも都鄙の差が出るものか、とも思うが、往事の東北と例えば東京を戯画化すると、こんな感じになるの? ここでの都会はイーハトーヴだけど。ここまで科学が発達して、しかし冷害を避けられないのか、という単純な疑問も→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
個人的には感じてしまうし、どこか薄暗く描かれているにせよ、こうまで未来的都会的にするよりも、発展途上な、純粋にレトロな感じを出してほしかった。→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 15
話の削除挿入については、クーボー博士との初邂逅時の掛け合いや、特に原作7章及び8章の前半をなぜ削除したのか、これはブドリが最後カルボナードに行く決心をかためたことに関係して、重要な場面と思う。窒素肥料を降らせ、雲海の美しさに心うたれ、感謝する人々の手紙に喜び、しかしまた→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
事情を勘違いした百姓からボコられつつも、お陰で生き別れの妹と再会し、その旦那、子供との交流が生まれ、他方では、かつて世話になった赤髭主人とも再会し、また、てぐす飼いのもとで一緒だった男と再会し父母の墓のありかを聞いたり……すなわちこの7章〜8章前半は、ブドリが自分の送ってきた→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
人生をあたかも逆から辿るように確認しつつ、また、ブドリのこれまで関わってきた人々が彼と別れてのち、どのように生きてきたか、そして、どのようにこれからを紡いでいこうとしているか、そうしたことをえがいたシーンの連続だった。雲海での没我の場面は、だからブドリの人生のひとつの頂点では→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
ないだろうか。山での暮らし、親に捨てられ、妹が攫われ、てぐす飼いに使われ、赤髭主人に拾ってもらい、クーボー博士や所長と出会って火山技士となり、そののち、7〜8章のできごとがくる、以上を全体的に見てみれば、雲海の場面をその頂点として、彼の人生がひとつの円環を成しているようにも→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
思われる。しかしまた彼は最期、カルボナードを噴火させることで、新たな自分の生まれることを防ぐことで、人々の命を救い且つ、自分の送ってきた人生、すなわりその円環にひとつの決着をつけることができた。それが自分の人生への決着でもあるからこそ、ブドリの最期の決心が、心うつものとして→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
我々に迫ってくるんではないのだろうか。映画版ではずっと人に「大丈夫でしょうか」と聞き続けていただけの彼が最期の最期で「やりましょう」って言うようになってて、単なる成長物語みたいになってたが。また、原作では感じ取れる、ブドリの営為のすべてがあくまで(広義の)農業に根差している→
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
という感じも薄れていたように思う。たんに立身出世してったみたいで。そういえば「あちら側の世界」でのできごとは賢治の他作品をふまえた台詞とか場面になってたな、ってツッコミをいれて感想終了。
— 110 (@it_takes_davi) 2014, 9月 16
グスコーブドリの伝記―猫の事務所・どんぐりと山猫 (ますむら・ひろし賢治シリーズ)
- 作者: ますむらひろし,原作: 宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1995/07/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
ますむら・ひろし宮沢賢治選集 1 グスコーブドリの伝記 (MFコミックス)
- 作者: 宮沢賢治,ますむらひろし
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2008/09/22
- メディア: コミック
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (7件) を見る