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ワールズエンド・サテライト

アニメ・漫画の感想・考察,アニソンレヴューのページです。京都の院生2人で編集・更新しています。

『桜Trick』総話レビュー

2014年冬アニメが完結したということで、自分が観切った作品はできるだけ(いつも各話レビューをダビさんに任せてる分)総話レビューを書こうと思います。

 

今回は、至高の百合ものとして一部で猛威を奮っていた(??笑)『桜Trick』について。

この作品、観終わった今でも、他アニメ作品や漫画作品といった想像力の中でも、かなり立ち位置が特殊な百合ものであったというのが個人的な意見です。

キーワードは、名前のない、けれど確実に特別である「関係」です。それを極端なまでにポップにビビッドな桜色で彩色したのがこの作品であるというのが、僕の感想です(特に優×春香の関係)。  

 

僕はこの作品、ニコニコ動画で観たので、地上波放送より2週間遅れて見始めて観終わったんですけども、見る前の前情報として持っていたのは以下の2つでした。

1.ダビさんの証言

「青P、『桜Trick』、あれね、ビビりますよ。何か女の子出て来て、1話でいきなりキスしだすんですけど、チュッチュチュッチュして喘いでるんですよ。何じゃアレ!?」(1話観終わった感想)

2.ニコニコ動画のいわゆる"日常系"難民の人たちの『のんのんびより』最終話放送時などにおけるコメント

「『桜Trick』は次の難民受け入れ先にはならないと思われるよ。日常系ファンが求めるのは百合"っぽい"描写。あれはガチ百合だよ」(たしかこんな感じだったと思う)

 

うむむ…そんなにハードにホモセクシャルな作品なのか、と。

とは言え、僕は、志村貴子青い花』や秋山はるオクターブ』、タカハシマコ『乙女ケーキ』といったような、端的にセックス描写も含まれる百合もの作品も好きな漫画(特に秋山はるオクターブ』は愛読漫画の一つです)に挙がるので、それほど狼狽えてもいなかったですが。

後はタイトルがめちゃくちゃ素敵ということかな。個人的にP-MODELの超初期の名曲「MOMO色トリック」を思いださずにはいられなかった。 


数話観て思ったのは、コトネ×しずくカップルが表に出た時に、ですが、「ここ一応は共学なのに、主要キャラ6人(厳密にはノンケのゆずを除く5人)やその周囲は女の子がカップルになることに対して一抹の疑念も抱かないの!?」ということ。

百合カップルがいることはデフォルトの空間なの!?と(特に序盤しずくのコトネへの想い的なシーン)。それって背徳感がないようにも思いますしね。これは個人的嗜好かも知れませんが。苦笑

 

作品は場を変えシチュエーションを変え、優×春香がキスしまくります。これがニコニコ動画で観てると半パート毎の「ノルマ」とされていて、おっぱじめたらノルマ達成とコメントされてて面白かった。

 

さて、ここからちょっとレビューっぽい考察になるのですが、最終話直前まで観終わってダビさんに言われました。

「優と春香は一度も『好き』だとか『愛してる』だとかそういった言葉を使ってないんですよね」

たしかに!!それはコトネ×しずくカップルもそうですよね(もしかしてこっちは最初あたり言ってるかも知れないけれども)。

 

あれだけ色んな場所で所構わず、ヘテロセクシャルカップルも顔負けな程に、事あるごとに、おっぱじめてるのに、一度もお互いの関係に名前を付けていないんですよね。

現実に則して考えれば、あそこまで身体的な関係を結んだら―それがたとえキスまでだっとしても―どちらかが2人の関係を一旦落ち着いて考えて、言葉で「締結」したり「確認」しようとしたりすると思います(例:「私たちは恋人同士なんだよね?」「私は身体だけなの!?(ここまで直接的に言わなくてもそれを匂わせる言葉)」「私のこと本当に好きなら私たちの関係って何なの!?」)。これはノンケカップルでも、同じだと思います。

 

しかし、世の恋心というのは複雑で多様なものがあって、それを当事者同士が名前を付けてしまえばたちまち崩れてしまうような関係と言うのが確実にあります。

それはセックスフレンド、浮気(あるいは不倫)関係、一途な恋心とそれによる犠牲、お互い惹かれつつ欺き合うといったのような他者からすれば簡単に換言できそうな関係から、本当に当事者同士でも分かっていないし、客観的にも名状し難い関係まであります。主観的にも名前を付けられず、客観的判断も仰げない想い、関係というのは確実にあると思います。

そして、そういった名前のない関係って、「恋人同士」とは違う感情が蠢いていると言えます(それをどうにか「言葉に落とし込める」のは、古来より表現、文学の仕事だったように思います)。

 

その、実は宙ぶらりんな関係性が優と春香にはありました。

そもそも普通の人はしない特別なことをしよう→キスという始まりが優×春香の関係性であって、その「特別」が何であるのかは最終盤まで(解釈によっては最後の最後まで)明示されません。まるでお互いが、それに直面しようとすると目を伏せようとしているかのように(SBJKとか言い出しちゃうしね…笑)。

 

メタ的に見れば、この背徳も感じない、かと言って身体的な展開もない(まあもっとメタ的になれば、古い言葉でいうと、B以降の描写をすると放送規制的なのに引っかかると思うけど。笑)、いつまでもキスの快楽と嫉妬に揺れる日常は大きい目でみれば、幸福よりも停滞、悲観的にさえ思えるのではないでしょうか。

 

そこで機能するのが、美月会長ですね。

自分にホモセクシャル(バイセクシュアルかも知れないけど)の気はないと言い聞かせてたんだけど、終盤、自分の春香への気持ちに直面する。彼女はその点において、お姉さんらしく、優よりもちゃんと想いを清算しようとしている(まあ姉妹揃ってホモセクシャルで、かつ、好きな人が一緒と言うのは凄いなというメタ視点ツッコミはあるけど。笑)。

そこで優と春香にキスなんていけない!と叱りつけます。ここも名前をつけたがらない彼女たちに対して、言葉にしにくい嫉妬心があったように思います(自分は自分の気持ちにちゃんと向き合ってる分)。


特に秀逸なのは最終話で、美月の卒業パーティーで、優と春香を2人にして「マズい!このままでは優たちはキスしちゃうんじゃ!?」と邪推してキッチンに押し入るシーン。

ここで一悶着あって、優は「お姉ちゃんは関係ないでしょ!『これは私と春香のことだもん!』ね、春香、キスしよう?」とねだります。プチ修羅場

修羅場展開、ドロドロ恋愛沙汰好きな自分としては、まさか『桜Trick』でこんなシーンが!?と思いました。

想い人が、やもや自分の妹とキスする光景に「や、なめなさい!!」と制止をはかる美月会長、それをよそ目におっぱじめる2人の構図に、ちょっと『School Days』のラストや『Gift』なんかを思い出してイイネ!となりました。笑


そして、最後の最後。

美月会長は卒業式の後に春香に「付き合ってください」と「告白」します。

そこで初めて自分たちの関係の宙ぶらりんさに直面する春香。それを見守る優。

2人は教室に戻る。そして「好きって何だろう?好きって口にしながらキスしたら分かるかな?」とまたおっぱじめます。

これが小さな一歩だけど、彼女らにとって大きな成長であると感じました。


こうしてみると、何となく物語の舞台となった高校が廃校寸前と言うのは「2人が自分たちの関係を後回しにして背徳感も身体的展開もなく宙ぶらりんのままでは、いつか崩れてしまうよ」というメタファーだったのではないかとも思えます(まあ完全にこれは深読みし過ぎかな)。


さてレビューっぽい考察はこれで終わり。もうブラウザバックしていただいて構いません。



後は個人的な趣味の完全な蛇足です。

個人的にこの作品で好きなキャラを挙げろと言われれば、断トツでコトネです。

ちょっと姉御肌のお調子者で、友達思いで、(楓とは違うベクトルで)誰より周りの空気を読みつつ、あえてその空気をぶっ壊すマイペースさはとても可憐で強かに映りました。その上で、パートナーであるしずくを誰より理解して茶化したり、慰めたりと包容力もありました。


1番共感するのは、友達に対して自分独自のあだ名をつける点(春香→春ぽっぽ、楓→楓っこ)。

僕もついつい、自分独自の呼び方で友達を呼びたくなって、そう呼ぶ癖が…特に高校時代にはあったのを思い出しました。

何と言うかそれは自己顕示欲とかではないし束縛心とも違う気がするんですよね、思い返してみても(実際、束縛したい気持ちなんて一切ない特別親しすぎる友人以外にも仲良くなったらすぐにちょっと捻った呼び方で呼びたくなってました)。多分、友達がいくらいて、マイペースを装っていても、根底にどこか内面は寂しいという気持ちがあったんだと思います。自己フォローしつつ。苦笑

その点でコトネは共感しましたね。高校時代の自分ってこうだったよなぁ、と。


だから個人的にはコトネ×しずくをもっと映してほしかった!というか、コトネ単体パートさえ欲しかった!と言うのがワガママな意見です。

皆さんはどのキャラがお好みだったんでしょうかね??