映画『楽園追放 Expelled from Paradise』感想
映画『楽園追放 Expelled from Paradise』の感想です。Twitterからの転載。
個人的には、今年みたアニメ作品で上位3つ、とかを決めるとなったら、本作を挙げると思います(あと挙げるとしたら、「たまこラブストーリー」と「ご注文はうさぎですか?」あたり)。
SF作品には特段詳しくないですが、以下感想です。
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映画「楽園追放」の感想。最高におもしろかった。根柢にあるテーマ性としては、楽園や理想郷のごとくえがかれる管理社会すなわちディストピア、これに対する疑念ということで、他の虚淵脚本作品「psycho-pass」(一期)や「翠星のガルガンティア」などと同系だと言えようが、本作にひとつ→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
それらと違う要素があるとすれば、それは、「管理社会」「それ以前の社会」に代わる、またもうひとつの可能性を呈示していたこと。本作では「ディーヴァ」「地表(ディンゴ)」「フロンティアセッター」という三者がそれらを象徴しているが、果たしてこれらは映画の結末において、なにかしらの欠如を→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
抱えたものとして、或る意味では同列にあるがごとくなっている(個々人がどれをよいと思うかは別としても)。そしてそれら三者に対して、そのどれを選択するのか、みずからの思いを問われる者として、主人公「アンジェラ」がいる、という構図になっている。アンジェラはディーヴァから地表に降りる際→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
電脳パーソナリティを容れる器であるマテリアルボディ、これの生成を、他の捜査官を出し抜くため、16歳程度の体の段階で止めてしまうが、そのことによって彼女は、ディーヴァに「適応」しきった「大人」としての自分を手放すことにもなり、16歳というまさにみずからの「これから」を意識的に問い→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
始めるそうした位置、これへと自分を定位することになり、そこから物語は始まることになる。アンジェラは最初こそ、捜査官というディーヴァにおける特権的地位に就けている自分を誇り、また、ディーヴァにハッキングをしかけた何者かを調査すべく地表に降り立ち、しかしディンゴによって機動外骨格の→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
アンテナを、ハッキングされ位置情報を知られないため、という理由で壊されてのち、街で捜査するなか肉体の勝手がわからず、無理が祟って寝込み、ディンゴに看病され、彼と腹蔵なく話し合う……というところまでは、彼女はやはりディーヴァ側の人間で、肉体に対するその電脳世界の優位を信じて疑いは→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 1
していなかった。だが彼女はディンゴと話して気が付くことになる。荒廃した地上においては食糧をはじめとする日用物資、そして電脳世界では、社会に対するみずからの有用性を示すことによって割り振られるメモリの多寡、それぞれ違うかたちではあれ、「資源」をめぐる争いが生じているのは、どちらの→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
世界でも変わらない。そうした違いを意識するディンゴは、アンジェラが一度問うたとおり、必ずしも実在する肉体をそれだけで賛美する者ではないのかもしれない。ただ彼は、管理されるのは御免と言い、ディーヴァにおけるデータとして生きることを峻拒する。肉体を超越した悦楽を手に入れているとする→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
ディーヴァ人、それを説明するアンジェラの言、これらを否定こそしないものの、ディンゴはあくまで自分の骨を以て感じられる音楽これを愛し、また、有用性の観点によって抛擲されてゆくもの、これへの感受性を残した立場すなわち肉体を持つ人間としての自分、これなるものをそれとして受け容れようと→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 1
する。それゆえに「別の在り方」すなわちディーヴァでの生を選ばない。外宇宙をめざすロケットの人工知能だったフロンティアセッターが、自身のロケットの(データとしての)乗組員を募るべく、しかしディーヴァが宇宙探索をとりやめていたため、ハッキングという手段をとおしてそれを行なったこと、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
かかる真実を告げるためだったとは言え、ディーヴァに帰還してゆくアンジェラに対しても(そして多分アンジェラ以前に組んだ捜査官に対しても)、ディンゴは地表のすばらしさを説きはしない。なぜなら別にすばらしくはない、そこに居てしあわせだと手放しに言える場所ではないのが地表だからであり、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
なにがしか生きるうえでのつらさはやはりある。フロンティアセッターによって呈示された外宇宙に行くという選択肢、これを断ったのも、きっとディーヴァを峻拒したのと同じ理由だろうと思われる、すなわち、高所恐怖症なんだ、そう言ってディンゴは、かかる欠点を抱えた自分を受け容れるわけである。→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 1
その受け容れる、というのは、自分になしうることをする、ということで、決して単なるあきらめではない。そうしたディンゴのありようはアンジェラにとって、非常な衝撃であると共に、ディーヴァの庇護下でそれを求める以外の生き方を示すに充分であったろう。ところで、フロンティアセッターの真意を→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 1, 2014
伝えるべくディーヴァに帰還したアンジェラは、地表で病気に罹ったことに関連して、今度は自分がディーヴァにとって病原菌のごとくなる。すなわちフロンティアセッターによって抱かしめられた「(より高次の)自我」……という言い方が大仰なら、「自分」について問い直せる「自分」とでも言おうか、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
そんなものと(フロム的な意味で。マルクーゼとかは嫌いそうなやつ)、及びディンゴがフロンティアセッターに対して語った「仁義」、これらの観念によって、である。(完全なる)管理社会においては、その社会の要請に従う以上の観念やら義務感やら、そんなもんを抱くのはまさに叛逆にも等しかろうし→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
また、単なる(社会への)義務感とも違う、仁義というものは、フロンティアセッターがそれについて説明しかけたごとく、言葉で表しようのないものでは別にないのだろうが、しかしディンゴが(たしか)語っていたように、人間は、いちいちそんな説明を必ず付さねばならぬほど、小難しいものでもない。→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
仁義とて義務感のごとく、なにかの論理に接収され利用されることも無論あるだろう(ディーヴァの高官達が、自我を抱いたフロンティアセッターが地球を飛び立ってのち戻ってこないとは限らない、ディーヴァ顛覆を起こしかねない、と疑った理由のひとつとも考えられる)。義務とか義務感とか或いはまた→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
仁義、これらはその根拠とするものをあえて見出ださんとすれば、神や、人間間の合意や、それを離れて実体視した政体とか、様々に求められ、そのそれぞれにおいて、その眼目とされるものは変わってくるだろうと思う。ディーヴァについて言えば、具体的個人としての支配者がいるのか、サーバを統轄する→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
プログラムかなにかが「高官」なのか、それはわからないが、ディーヴァにおいてはこれへの不安要素を排除していくこと、これが少なくとも捜査官にとってはその最上位の義務だった。ディーヴァの安寧、そしてそのための有益性、有用性といった観点からして、そこからは、(人間らしい)「仁義」という→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
要素は抜け落ちる。人間らしい、などと書いてしまったが、ではディンゴやフロンティアセッターにとっての「仁義」とはなにか、となるとそれは、ディーヴァと対比するごとく言ってみるなら、それが包括されるより大きな目的とか有用性とか、かかる条件のもとでなされるものではない、人への思いやり、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
無欲な在り方、そんなものを言うのではないか。なにかによってその思いが搾取される可能性とも表裏一体だろうが、これを自発的自律的なものとして重視しようと思えば、これを定義づけるというのはやはり、なにかそぐわない感がある。ディンゴは、せっかくできた友人の一世一代の打ち上げだ、と言って→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
フロンティアセッターを助ける。地上調査員としてもう雇用されることがなくなる可能性や、或いは直接的な報酬もないこと、これらを思えば彼にとり、得することなどなにもない。ディンゴはべつに高潔な人物などではなく、優秀だが素行不良、とは彼についての資料にあったし、地表に降り立ったばかりの→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
アンジェラを利用しサンドワームの肉を手に入れる、ということもしていた。そんな狡猾な面とて持つ彼がいう仁義とは、果たしてやはり義務感などとは別、彼なりの倫理論理で感じられまた実行される、なにか感覚また振る舞い、としか(私としては)言いようがない。あえて言うなら「友への思い」とでも→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
いったところか、親愛の情や、感謝や、同情など様々含めて。フロンティアセッターの思いや或いは「仁義」を説いたばかりにデータが凍結されアーカイヴ化されようとしていたアンジェラを助けたフロンティアセッター、彼にとっての「仁義」もまた、そういったたぐいのものだろう。もちろんアンジェラを→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
助けたことでフロンティアセッターが結果として得た戦力は多大なものではあったけれど、果たして彼女の救出がそれを見越したものであったか、まぁ見越した部分があってもいいだろうが、そればかりにすべてを還元するのは人間の論理ではない、気もする。人には「それ以外」もある。そしてそれこそは、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
自我持ち人間に近付いた人工知能であるフロンティアセッターにとり可能となったもの、また、電脳世界ディーヴァがみずからより切り捨てていっているものではないか。資源を食い潰していくよりほかない荒涼たる世界、それは地表もディーヴァも場合によっては外宇宙も含んだすべてだが、そこにおける、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
有用性などを超えた、いわば「あそび」の領域、それがここでいう場合の「仁義」の成り立つ場であり、合理性とかに還元されきらない、まさに「人間らしい」場なのでないか、と、そんな気がする。そしてそんな「仁義」を共有(?)できたディンゴ、アンジェラ、フロンティアセッターの三者は、それぞれ→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
自分の道を選んでいくことになる。ディンゴは変わらず地表で暮らすのだろうし、アンジェラはもまたその埃っぽい地表で、ディンゴに「そのほうがいい」と言われた「重たい」肉の体をまとって、生きていくのだろう。ディンゴとそののちも一緒なのかはわからない。そしてフロンティアセッターは宇宙へと→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
旅立つ。ディンゴもアンジェラもなく、だれか電脳パーソナリティもついてくることなく、たったひとり、みずからの存在証明のために彼は飛び立つ。自我を持ちえたとは言え人工知能もまた道具だと考えると、或る目的のもと彼を用いる実際の人間がいない、というのは、道具としてのフロンティアセッター→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
にとっては片手落ちなのではないか、すなわち「道具」としての「存在証明」にはならないのではないか、そう思われもするし、また、純粋な道具であった時分に組み込まれたプログラムをただ実行してしまうこと、それは道具としての自分を超越した「自我」もつ者としても、盲目的にすぎるのではないか、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
そのようにも考えうるが、しかし、地表に生きる人間もディーヴァに生きる人間もそんなものだろう、とは言い得よう。彼等とて、世界に存在するその仕方によって、仁義の実行やら素粒子のナントカカントカを観測するとか、そういった人間ならではの可能性にも拓かれつつ、しかし、食糧なりメモリなり、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
そういったなんらかの欠如、そしてそれを埋め合わせるための競争に見舞われつつ、そうやって生きている。それは、本能(プログラム)やその境遇含め、みずからを受け容れて生きるということだろう。その点にかんして、ディンゴもアンジェラもフロンティアセッターも(また電脳パーソナリティ達も)、→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
その運命に変わりはないのだろう、そして、みなそれぞれに自分を受け容れ、生きていく、生きていかざるをえない、生きねばならない……というのが結末まで見て抱いた感覚。肉体で生きる人間としてはディンゴや最後アンジェラの受け容れた在り方に親近感を抱くだろうが、結局どの在り方を称揚している→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
ものではない、単純な肉体賛美で終わらない、というのは、狭量ではなく、よいところだと思う。しかし冒頭のビーチの場面、アンジェラをナンパした男は、メモリたくさん積んでるじゃん、的なことを言ってもいたが、アンジェラのその豊満な肉体に惹かれて近付いたふうにも見え、……それは本能的な欲求→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
とは別なのか? エロスを肉体的快楽に限局せず、さらなる結合、より大きな統合をめざす根源的衝動といったふうにでも見るのだとしても……けど、本能的な悦楽、緊張の高まりとそれの緩和に還元される快楽(食欲の高まりと満腹による満足など)とは無縁なのが電脳パーソナリティだとするなら、かかる→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
性的なモチーフは、どんな意味を持つのだろう? 『her/世界でひとつの彼女』とかだと、最後サマンサが、何十万だかのAIと繫がってる、恋人関係にある、みたいなことを言ってたし、テレフォンセックスじみたのとか、他者の肉体を介在させた疑似セックスとかを主人公とヤってた(しようとした)→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
気がするが、電脳に移行したパーソナリティにとっても、そうしたエロス的感覚は性的な表象で以て感じられるんだろうか、とか、そんなこんなことを思った。不満なところとしては、最後ディーヴァの高官達が「より統制を強めねば……」みたいなことを言ってたところ。その線が消えたわけではないにせよ→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
この台詞では、彼等があたかも具体的個人のごとくみえてしまいかねない、と思ったのであった。行き着いた管理社会の怖さは、その非人称性、すなわち具体的個人としての支配者すら存在せず、皆がただ定められた様式に従い「自分」すらなくその生を送るだけになる、というところにあるんでは、と、そう→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
(自分としては)思っていたのだが、最後の台詞はどうにも人称的な感じ。具体的個人たる支配者がいてしまっては、それを打ち倒しさえすれば平和が、という構図が見出されることになり、この映画を通底する、どこか静かで緩やかな終末感、とでもいったものが消えかねないかも、とは思ったのであった。→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
そんな小さい不満はあるにしても全体としては最高におもしろかった。考察とか抜きにしても、銃撃戦、撃ち乱れるミサイル、崩壊する廃墟、ちょっと年上ふうの渋いイケメン、その狡知、可愛い少女(最初AnzuChangに似てるとか思ってた)、ジト目、乳揺れ、デカケツ、等々、これだけも見応え。→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) 2014, 12月 2
言及は少なくなったけどアンジェラはキャラとしても可愛かった。昨今では猫も杓子もツンデレという言葉で表せてしまうけど、個人的には彼女は、イケメンに振り回される高飛車な感じの女、ってふうに見えて、……こう言うとちょっと少女漫画っぽくも思えないだろうか。錯覚か。少女漫画の拡大解釈か。→
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014
アンジェラはまた、眉根を顰めたジト目ふうの表情をしていることが多かったけど、はじめて地表に降り立って土煙で咳き込んでしまったときの赤みがさした一瞬の顔とか、助けにきたフロンティアセッターと話していて笑ってしまい吹き出したときの顔とか、最高に可愛かった。そんなこんなで感想は終了。
— 110、ツインテールになりたかった (@it_takes_davi) December 2, 2014