ワールズエンド・サテライト

アニメ・漫画の感想・考察,アニソンレヴューのページです。京都の院生2人で編集・更新しています。

「桜Trick」中途レビュー

 「桜trick」を見てて思ったこと、まぁなんていうことはない、ただの感想。

  最初見た時は、ファッ!? キスして喘いどるやんけ、たまげたなぁ、とか思ってたけど、視聴を続けてみたら、主役のふたり、春香ちゃんと優ちゃんの関係性が、結構見てて面白い。基本的には、積極的にまわりの目線も何もなくキスを求める春香ちゃんに対して、消極的というか、抵抗……ではないんだよな、なんていうのかな、まだちょっと照れがあるというか、まわりの目線を気にしているふうな優ちゃんという構図があって、優ちゃんのほうが春香ちゃんに振り回されている、って感じであるけど、優ちゃんも攻めるときは攻めていて、そういう時には攻守逆転というか、今度は春香ちゃんのほうがアタフタすることになってたりする。で、なんか、互いが互いにとって思いがけない(?)ことをする相手って感じになっているとこれは言え、そういうところでこのふたりに生じている戸惑いや、照れや、嬉しさといった、そういう心情の動きというのが、ひとつの話のなかでも結構二転三転しているので、そういうところを見るアニメなのかと今は思っている。相手の行動が思いがけないものだっていうのは、まぁ場合にもよるんだろうけど、この作品だと少なくとも毎回「ふたりは幸せなキスをして終了」ってなってるから、あくまでそれが許容範囲だっていう条件付きでこれは、互いが互いにより惹かれる……というの? なんというか、そういう「自分からの働きかけから逃れる」みたいな部分を見せられて、相手により惹かれていくことになる、みたいな、そういう描写が前面にある話なんだな、と思ったのだった。まわりの他の4人の子も、そういやそういう関係性を成してるし。
 もうひとつ思ってるのが、あんまり考えれてないから中途半端なことしか書かんけど、胸を揺らす、みたいな、男目線みたいな(?)描写も割と多いこと(2chとかでも言われてますね)。それが悪いんだってさ。けど、百合もの……って他にはあんま見たことないから判らんけど、そういう作品は、そういう情欲をそそる描写っていうのを、してないの? 或いは、していけないの? そういう疑問をふと抱きもする。というより、そういう胸揺らすみたいな描写、これは本当に「男目線」という捉え方で一括していいのかしら? もしこの作品を、女性同士の恋愛をえがいたものとして解してよいなら……って、けどまだこの子等一回も(漫画でどうなのかは知らんけど)、恋人になろうとか、愛してる、みたいな、そういう恋愛関係をほのめかすようなことは、言ってない気がする。「ほかの娘たちとは絶対にしないことをしよう」と言ってキスはしているから、まぁそれはほとんど恋愛的なもんなんだろうと思っていい気はするけど、果たしてそこにあるのは、どっちかがどっちかを(男らしく?)リードする、みたいな、そういう役割意識がある感じの恋愛ではない、つまり男女間というので恋愛を捉える恋愛観ではなくして、あくまで女の子同士の(互いに互いの可愛らしさを求めるという)関係としてこれをえがこうとしている感覚、っていうのがこの作品にはある気がする(対照的なのは「きんいろモザイク」のアッヤヤーとかで、彼女は陽子ちゃんを好いているっぽかったけど、台詞には割と「男らしく○○してほしい」みたいなのがあって、そういう彼女の理想を体現しているのが(ちょっと人付き合いのうまくない彼女のまわりだと)陽子ちゃんだった、っていう感じがある)。もちろん、この現在で、リードするのが男、みたいな、旧弊な男女観を持つのはナンセンスというのはあるかもしれんけど、なんにせよ私としては、この作品は、共学校が舞台だから姿としては男もたまに出てくるけど,男性性みたいなのはかなり薄くえがかれている、と、そんなような感覚がしているのだった。だから「胸の揺れ」という描写も、まぁ作中人物には関係のない、我々視聴者にむけたものだから、こうした百合ものを好んで見ているであろう男性の股間に向けたものなのだって解してもいいのかもしれんけど、私としては、あれも女性が女性に向けて表する(女性的な)可愛らしさ……というにはエロティック過ぎるか? まぁなんというか、艶、みたいな感じがして、そこからは男性というものがかなり排除されている感覚がするのであった。だからこれは、女性の可愛らしさみたいなのを表すための表現に、男は本当に必要なのか、という疑問を叩き付けたりするかもしれない(言い過ぎだろうな)。女性を見るのは男性だけでない、っていうだけだし、すごい有り体な言い方をしたら、レズビアン的目線で見るかオナベ的目線で見るか、みたいなふうにまとめれるかも判らんけど、もしこの言い方に多少とも正しいところがあるんなら(というより差別的とか思われたくないんだけど)、この作品はむしろ前者のそれにより近い、っていうそんな感じがする。ま、あんまり百合アニメ見たことないから、この意見の正しさがどんなもんなんか、ってのは判らんけど、まぁやりたかったのは、2chで見る、これが男目線に媚びたアニメだってことへの反駁。だって、このアニメ、そういう目で見れんくなってってるんだもん、私。

きんいろモザイク (1) (まんがタイムKRコミックス)

きんいろモザイク (1) (まんがタイムKRコミックス)

 

  で、そうやって「桜trick」でいろいろ思ったところからまた思い出すのは、「きんいろモザイク」なんかだと、あれはアリスちゃんが鬼畜こけ……シノに惹かれる、というよりかまって貰いたくてしかたない、或いは、アッヤヤーが陽子ちゃんに見ててもらいたくてしかたない、みたいな感じで話がえがかれていて、で、これは、他方が他方をヤキモキさせるばかりだったという意味で、(互いの心の機微をえがくというかたちの)恋愛をえがいているというんでなくして、むしろ、一方が他方にじゃれついてるみたいな感じが私としては見て取れて、それはなんというか、或る子が好きな子にかまってもらいたくてこっちから逆にかまう、みたいな、或いは、好きなお姉ちゃんにこっち見てもらいたくてなんかちょっかい出す、みたいな、そういう「恋愛以前」という雰囲気があった、と、私としては思っている。トリックスター的な大天使九条カレンちゃんも、誰ともカップラーに(一応)ならんかったから、そういうところも、恋愛色の薄さに一役かってるという気がする。

のんのんびより 1 (MFコミックス)

のんのんびより 1 (MFコミックス)

 

  そういや「のんのんびより」もそんな感覚で見てたところがある。カップラー的な組み合わせというのはあっても、それは必ずしも恋愛的なそれを含意はしないって、私はそう思う。ほたるんはなんかいろいろとアヤシかったけど、肝心のこまちゃんはただのおこちゃまだし(お姉さんぽくふるまおうとはしてたけど、それが基本的に他人の目線ありきの、そこからどうすれば大人っぽく「見られる」かを気にしていたという点で、まさにおこちゃまだった感じ。けどそれは他方で、実際にあるそういう目線……というか他者他人を気にしてたのかって話になると、まぁ別にこまちゃんは、そういうのを見てはいなかったのだとも思う。もちろんこまちゃんがれんちょんとかに思いやりみたいなのを向ける描写は多々あったし、そういうやさしさがこまちゃんにあるということは無論否定はしないけど、ここだとむしろ、「今日はここまで」のところで、なっつんがサッと看板(?)を上げようとしたけどこまちゃんのほうを見て、そしてそれ以降ずっと見ながら、ゆっくりそれを上げたというのに対して、こまちゃんはゆっくり歩いてきて(というよりそれはなっつんが速かったのか)、自分の持つとこだけずっと見て、それで上げていたのだった、という、そういう描写に表れるところが今現在のこまちゃんなんだ、と、そう受け取りたい。なんでってなったら、まぁこどもっぽい子なんだって受け取るほうが(わたし的には)可愛らしく思えるからって、ただそれだけなんだけど)。